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TITLE : ココロアニマルクリニック+池田邸
COCORO ANIMAL CLINIC + IKEDA HOUSE PROGRAM : 動物病院、カフェ、住宅 ANIMAL CLINIC,CAFE,HOUSE SIZE : 389.34 m2(約117.8坪) PHOTO : 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 材木の奏でるリズム 2009年の夏の終わり頃、一人の女性が私達のオフィスを訪れた。本物件のクライアント婦人である。夫妻が実現したいのは、主に3つの機能であった。 一つ目は、30年営んできた動物病院の建て替えである。長い間動物医療の研鑽を重ねて来て、還暦を機に、包括的な、予防医学や動物の心のケアにまで踏み込んだ新しい動物医療を本格的に実践するための場をつくりたいということであった。 二つ目は、私的なホール。友人を招いて音楽会を開いたり、展覧会やパーティーを開いたりするための場所である。 三つ目は住居。子育てを終え、夫婦二人が住み、懇意の友人や来客を迎えるための簡素な住居。 これだけの要望があれば、当然床面積も大きくなってくる。しかし、予算は限られている。幾人もの設計者が取り組んだがうまくいかなかったようだ。私達が相談を受けるまでに既に数年の歳月が費やされており、融資の有効期限が迫っていた。 クライアントと初めて会ってから10日間後、私達の案を提出。限られた時間の中でこのプロジェクトを成就させるには、建築的な戦略が必要だと考えた。私達の、建築家としての戦略、それは「出来るだけ近くの素材」で、「できるだけ身近な技術」で、「できるだけ少ない工種」でこの建築物を成立させることであった。 「できるだけ近くの素材」としては、建設地から10km圏内で伐採された佐伯産飫肥(オビ)杉を採用した。この杉材は九州南部に多い地域品種で、反りにくく油分を多く含み耐候性に優れている。佐伯市の森林組合には日本最大級ともいえる北米から導入した巨大な製材工場が有り、製材時にでる端材やくずを燃やして熱を得て乾燥に利用するなど、強力かつサスティナブルな生産体制が確立されていて、その材木の品質は評価され、東北地方にまで出荷されている。その強力さ故に本来は地元に出荷されることがタブーとなっている素材であるが、今回は建築家自身がプロジェクト遂行のためにロジスティクスのプロセスに介入し、各種の折衝や交渉にあたって使用が実現している。構造材はもちろんのこと、内装材や外装材としても多用された。 外装への板材の使用は賛否ある場合が多いが、飫肥杉は昔は船材としても活用されたもので、現在でも佐伯市内では杉板を外壁に鎧張りした住宅が多くみられ、クライアントの感覚とも合致して受け入れられた。外装には、最も流通量の多い4寸幅の角材で板材を押えながら交互に配列するリズムとしている。この凸凹のリズムにより、建築のボリューム自体の光への反応性が高められ、太陽の運行に伴って一日中異なる表情をみせる。パスタがソースに絡むためにさまざまな形態を纏うように、この建築はよく光を絡め取ってくれているように思う。凸凹によりスリットや開き窓等の開口部のディティールもうまく処理できていて、この外皮が建築の調候フィルターともなっている。 基礎等に使用されているコンクリートに関しても、建設地から10km圏内である津久見市に大手セメント工場があり、骨材の砂利も近場で得られる。重量比にしても体積比にしてもこの建築物を構成するマテリアルのかなりの部分を、半径10km圏内の大地から得たもので賄っていることになり、輸送に伴うコストやエネルギー消費、CO2排出量は抑制されている。「できるだけ身近な技術」と「できるだけ少ない工種」については、地元の大工技術を頼った。大分ではまだ昔ながらの大工技術が健在で質が高い。工法の選択やディティールの設計では、そういった大工によって容易に施工することのできるものとなるよう心掛けた。 かつてバックミンスター・フラーは、近代建築におけるロジスティクスの問題を、いかに現代の技術を遠くへ、僻地へと輸送できるかという側面において扱ったが、現代においては真逆のテーマが必要とされる場面が増えている。「南北問題」と称される諸問題において建築家は多くの場合、目をつむるか無頓着であったが、これからの世界ではそうはゆかないだろう。いかに近くのものだけで現代建築を成立させ得るかという問題構成は、現在世界中で遂行されつつある「今世紀の近代化」の多くの場面で必要とされるのではないだろうか。 |
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